一回性

文書

普段生きている中で、一回性というものを無意識に意識してしまう。

「あぁ、この瞬間は一回だけでもう二度とないんだな。」ということにはたと気づき、
だからこそ大切にしようと思う瞬間。

この一回性には必ず私以外の誰かが関わっていて、私たった一人では感じられない。
目の前に人がいる時はもちろん、仮にいなかったとしても必ず誰かが関わっている。


ありがとね、と目を見て言われたとき。
固い握手をしたとき。
大切な手紙の字を見つめるとき。
汗が止まらないくらいがむしゃらに駆け抜けたとき。
深夜ラジオでお便りが読まれたとき。
生きてまた会いましょうと歌手が叫んだとき。
ライブで初めて聴く曲で気がついたら泣いているとき。
その時隣にいたお客さんが銀テープを回してくれたとき。

友達と美味しいものを食べながら涙が出るほど笑っているとき。
初めて会う大きなわんちゃんとハグをしたとき。
仕事で失敗したとき。叱ってもらったとき。
ふいに褒められて静かに感動しているとき。

あ、この一回だ、と気づく瞬間、
いつも切なくて、目の前がキラキラして、ちょっと泣きそうになり、
眉毛がハの字になってしまう。
だから急いでキュッと真っ直ぐに整える。

わたしはただの感激屋なのかもしれない。